この夏の節電を振り返って

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図1 東京電力エリアの最大電力の推移(2011年3月以降)

この夏,心配されていた計画停電や突発停電などの事態は幸いにも回避できました.上の図1は,東京電力管内での電力のピーク需要の移り変わりを示したもので,青い線が去年の様子,赤い線が今年の様子です.赤い線が青い線を下回っていますね.これは皆さんの節電によって,電力需要を抑えることができた証です.

また,下の図2は東電管内での気温と最大需要の関係を示したものです.去年が青,今年が緑(震災前)と赤(震災後)です.この図からもわかるように,去年並みに暑かった猛暑日でも,電力需要は大幅に抑えられ,5,000万kWを超えることはありませんでした.今夏の最大値は,8月18日の4,922万kWで,昨年の最大値(5,999万kW)と比べると18%,今年の想定(5,500万kW)と比べても10%も少ないものでした.暑かった日でも,皆さんの努力によって大幅な節電ができたことがわかります!

それにしても,どうしてこれほど大幅な節電が実現できたのでしょうか?それは,国民が一丸となり,様々な方面で節電に取り組んだ結果です.その一例として,産業界を中心に実施された,平日に休んで土・日に操業する「休日シフト」があります.文献(今中(2010))等で指摘されているように,8月の平日と土・日では,需要の最大値に1,000万kWもの差があるのです.平日の需要の一部を供給力に余裕のある土・日にシフトできれば,8月の需要削減に大きな効果がある,とされていました.この指摘をもとに,産業界では休日を土・日から平日にずらす「輪番操業」が行われました.その結果,下の図3に示されるように,平日と週末の需要が平準化され,平日の需要削減に貢献しました.

各家庭ではどうだったでしょうか? データの制約のため,家庭の電力は月平均でしかみることができません.しかし,下の図4に示されるように,昨年より確実に削減できていました.

東京電力から公表されている「今夏の電力需給状況について」でも,今夏の最大電力は昨年に比べ全体で1,077万kW,18%減,内訳では大口需要家が29%減,小口需要家が19%減,家庭で6%減であったことがまとめられています.

皆さん一人一人の節電が,今年の夏の計画停電・突発停電を回避したことになります.

ご協力,ありがとうございました!

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図2 東京地域 気温と最大電力の相関図
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図3 平日と休日の差は平準化された
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図4 家庭での節電は達成できたか?

今後のこと

この夏の電力不足という「緊急事態」は乗り越えました.しかし,夏の間フル稼働していた火力発電所は,これから少しずつ,点検の時期を迎えます.また,今後,原子力発電所が点検のため長期的に停止することになれば,全国的に,これまでのように潤沢に電気を使えないかもしれません.

[PDF]経済産業省「夏の電力需給対策の総括」でも,この冬以降も,とくに関西電力管内などで電力が不足する可能性が高く,息の長い取り組みが必要とされています.

また,温暖化対策のための省エネは,今後ますます重要になってくるでしょう.これから先も,無理のない範囲での節電を,考えていきましょう.そのために,是非,この夏の経験を活かしていきましょう!

(これらの図や用語についてもっと詳しく知りたい方はこちらをクリック)