いつ節電、どれだけ節電

最大電力についての豆知識

夏・冬のピーク需要は気温次第

4月に入って電力不足は落ち着きましたが、夏に向けてまた電力が足りなくなると言われています。ナゼでしょうか?ポイントは気温です。

東京の最高気温について、昨年一年間の推移をグラフにしました。4月から5月にかけてはおだやかな日が多いですが、夏に向けて気温は上昇していきます。昨年が猛暑だったのは記憶に新しく、35℃を上回る酷暑日が10日もありました。秋に入ると一気に気温が下がり、1月、2月あたりが寒さのピークになります。

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図 東京の最高気温の推移(2010年4月1日以降)

同じく昨年一年間の東京電力の最大電力をグラフにすると、形が似通っていることがわかります。電力需要の図の方が少しややこしいのは、平日と休日の需要に差があるためです(>> 電力需要は平日の方が高い)。平日のみ(青色の線)でみてみると、需要が大きかった時期は夏期7月下旬〜8月下旬と冬期1月〜2月にかけてで、暑さのピーク、寒さのピークに重なります。昨年は、7月下旬に暑い日が続き、冷房需要のために最大電力が一気に6000万kWになりました。その後、8月のお盆の時期は、気温は引き続き高かったのですが、工場がお盆休みに入ったために、電力需要はいったん落ち着きました。しかし、お盆休み明けには、再び6000万kWぐらいの日が続いています。最大電力は9月に入ると4000万kWぐらいに落ち着き、冬に向けては暖房需要のために少しずつ増えていきます。そして、年末年始休みのあと1月から2月にかけて5000万kWを超えました。

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図 最大電力の推移(2010年4月1日以降)

気温と最大電力の関係:もう少し詳しく知りたい方のために

このように、気温は最大電力を大きく左右します。もっと正確に知りたいという方のために、両者の関係をグラフにしてみましょう。最高気温が25℃を超えるようになると、冷房がよく使われるようになるので、最大電力は増えていきます。30〜35℃のあたりをみると、気温が1℃あがると、最大電力が200万kWぐらい増えています[1]

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図 気温と最大電力の関係

[1]専門家の間では「気温感応度」と呼ばれている関係で、詳しい分析によれば、気温1℃の変化に対し最大電力の変化は150〜200万kWぐらいといわれています。

最大電力 最近の推移

それでは、最新の状況はどうなっているでしょうか。

3月11日の東日本大震災によって、最大電力は3000万kW台まで落ち込みました。その後も、皆さんの節電努力等により、一年前と比べると800〜1000万kW程度下回っています。このペースが続けば(停電を回避するという意味では)よいですが、まだフル稼働していない工場などもありますから、夏に向けては予断を許しません。

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図 最大電力の推移(2011年3月以降)

ところで、この図は、昨年の同じ時期と電力のピーク需要を比較しているので、節電対策の効果の“見える化”にもなっています。みなさんの会社でも、日々のピーク需要について上のような図を描いてみてはいかがでしょうか?(気温等の影響もあるので正確ではありませんが)ピーク需要が下がっていれば、節電努力のアピールにつながります。

一日の電気の使われ方

一日の中で、電気がどのように使われているのかを知ることで、いつ、どれくらいの節電が必要かがわかります。ピーク需要というと、午後早い時間帯(13−16時など)の山形の需要カーブをイメージしがちですが、夏期には午前から夕方まで比較的フラットに需要が大きくなっています(図)。政府は、ピーク時間帯として、7月〜9月の9−20時の需要引き下げを呼びかけています。夕方以降は、家庭の在宅率が長くなり、家事用の家電利用や、照明、空調などで電力消費が大きくなるので、各家庭での節電への心がけが重要です。

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図 夏期最大需要日の需要カーブ推計
出典:資源エネルギー庁推計(2011年5月13日)[PDF]

電力需要は平日の方が高い

また、平日と土曜・休日とでは、電気の使われ方も違います。休日は工場やオフィス、公共サービスが休みとなり、電力需要は平日よりも小さくなる特徴があります(>> 今中 健雄(2011))。

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図 8月の平日・休日・土曜のピーク日の電力消費パターン
データ:今中 健雄(2011)より

夏期ピーク需要の予想

ピーク需要の内訳は家庭:業務:産業で2:4:3

東京電力管内の夏期ピーク時間帯13-16時における需要(平年ベース)を下記の通り推定しました。夏期最大は猛暑日におけるピーク需要を示しています。夏期平日平均で家庭:業務:産業で2:4:3という感じです。

夏期ピークにおける需要の内訳
(岩船研推計)
夏期平日 夏期最大
家庭 1,200 1,400
業務 2,300 2,600
産業 2,000 2,000
合計 5,500 6,000
(単位:万kW)

夏期平日平均で産業用が全体の1/3を占めるということで2000万kW、家庭用が600W/世帯として2000万世帯で1200万kW、残りが業務用と推定しました。

空調対策は重要:夏期最大需要の4分の1

内訳を図に示します。業務用空調と家庭用空調を合わせると、夏期平日平均で全体の2割弱、夏期最大で全体の4分の1程度を占めています。空調(冷房)対策は大変重要です。

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図 夏期ピーク需要の内訳詳細(岩船研推計)

全体の4割を占める在宅世帯がカギ

次に、家庭の内訳を図に示します。夏期平日の在宅比率を40%と想定しています。ピーク時の電力消費は在宅世帯で1000-1200W、非在宅世帯で300Wとなっています。東電管内の全2,000万世帯のうち、在宅世帯は4割で800万世帯です。昼間はここでの節電対策がカギになります。

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図 住宅における夏期ピーク需要の内訳(岩船研推計)