論文・書籍など

  • 日本エネルギー経済研究所(2011/06/13)[PDF]原子力の再稼働の有無に関する2012年度までの電力需給分析. (2011/06/14追加)

    現在停止中、今後定期検査入りする原子力発電所の再稼働がない場合、日本の電力需給や電気料金への影響を分析したレポートが出されました。その結果、仮に再稼働がない場合には、2012年の夏の電力需給は大変厳しくなることが予想されます。また、原子力発電を火力発電で代替することによる燃料代が増加するため、これを加算した場合の電気料金は、標準世帯あたり1000円を超える上昇になるという結果が紹介されています。

  • 産業技術総合研究所(2011/06/03)夏季における計画停電の影響と空調節電対策の効果(速報). (2011/06/14追加)

    産業技術研究所による、家庭・業務で対応可能な方策を実施した際の最大電力削減への貢献度のシミュレーション結果です。家庭部門では、窓日射遮蔽や空調設定温度の見直し等により空調負荷を下げることでピーク時消費電力が削減されますが、計画停電やサマータイム導入(生活時間のシフト)でむしろ消費電力が増加する、という結果が出ています。サマータイムによる早期帰宅後に一斉にエアコンがONになるとピーク電力が発生してしまう、ということです。方策を全世帯が実施した場合の計算結果ですので、実際の影響はこれ以下となると考えられますが、方策間の比較検討、サマータイムの導入をすべきかどうかの判断基準として、貴重な知見です。

  • [PDF]日本建築学会(2011/05/26)照明環境に関する緊急提言. (2011/06/08追加)

    今回の電力不足を契機に、照度基準や設計思想が過剰照明を誘発してきたのではないか、という議論が喚起されました。これを受けて、JIS基準の改正(5/9)と照度下限値の徹底が周知(5/13電力需給緊急対策本部)されていますので、ビルや店舗の関係者の方々にはいまいちど照度チェックや間引きの徹底をお願いしたいところです。この提言ではさらに、中長期的に照明の理念を再点検する必要があると指摘しているのが特徴的でした。

  • [PDF]低炭素社会戦略センター(最終更新日2011/04/18)震災後の電力供給不足の解消にむけたシナリオ. (2011/06/01追加)

    今夏の緊急節電対策のいわゆる「技術的ポテンシャル」について,主に家庭部門を念頭に取り纏めたレポートです.現在は過半を輸出するために国内生産されている太陽光発電を,全て国内で設置した場合のポテンシャルなど,様々な目新しい対策を検討していて,タブーを排した姿勢が興味深いです.ただ,技術的に考えられる最大限の可能性という「技術的ポテンシャル(Technological Potential)」に終始している感があり,次の段階として,経済性を加味した技術・経済的に考えられる最大限の可能性である「経済ポテンシャル (Economic Potential)」についても評価し,それらを実現に移すための具体的な政策提言にも踏み込んでいただければ,と思います.

  • 東京財団(2011/04/14)今夏の電力危機に向けて(2). (2011/05/26追加)

    化学工学会の提言にある「時間シフト」と「空間シフト」という概念を利用して今夏の節電対策を整理したレポートです.様々なデータに基づき,一定規模以上の産業の努力と電力需要の曜日シフト(週の中での需要平準化)だけでは需給ギャップの解消には不十分であり,大幅な電力需要の時間帯シフトによる需要調整のポテンシャルが大きい,としています.家庭部門で行える「時間シフト」と「空間シフト」の対策にも細かく言及されており,コストの制約などを踏まえてどこまで行うべきか,といったことを考察しているので参考になります.「一部屋に家族が集まりエネルギーをシェアする」,「日中など家に一人となる場合は、家庭の電気をできるだけ止めて、図書館などの公共施設で過ごす」などの対策は,是非,多くの家庭で実行していただきたいと思います.

  • 日本テレワーク学会(2011/05/01) [PDF]緊急提言 テレワークによるオフィスの電力需要削減を. (2011/05/26追加)

    オフィスワーカー1人あたりの電力消費量は1kW.テレワークでオフィスをビル単位,あるいはフロア単位で全閉できれば,今夏100 万人がテレワークを実施することによって100 万kW の電力削減が可能という試算です.経産省の試算でも,床面積当たりの最大電力需要が55W/m2で,東電管内のオフィスワーカー1人あたり床面積21m2くらいですので,1人あたり1144W(うち空調が520W,照明が270W)です.家庭でエアコンやPCを使うことによる増エネ分はありますが,小さい部屋で出力の小さなエアコンを使うなどの工夫で節電すれば,トータルでみると節電になる可能性はありますね.ただし,オフィス側でフロア単位での消灯や空調利用時間の短縮やスペースの縮小ができるのか,家庭でどれくらい節電しながらテレワークが行えるのかなど,様々な条件があり,本当に節電になるかどうかは条件次第といったところでしょうか.

  • 大藤 建太,西尾 健一郎(2011),新潟県 節電社会実験 第2回トライアルの結果と事後評価面の課題に関して,SERC Discussion Paper 11009. (2011/05/24追加)

    新潟県の節電社会実験に関する2つめの事例紹介です。4月27日には2回目の実験が行われましたが,1回目のときに節電効果が認められた定時退社や操業シフトなどを再び徹底することで,1回目と同じ前日比20万kWを節電できました。夏に向けて,新潟県ではこの成果を深掘りし,30℃以上の日に冷房温度を2℃上げる対策を呼びかけているようです。こうした動きは,山形・秋田など,東北電力管内のほかの日本海側の県にも広がりを見せつつあるそうで,成果が注目されます。

  • 小松 秀徳,今中 健雄(2011)ピーク電力需要の削減に向けた輪番操業パターンの試算 ―複数の事務所の輪番操業を例として―,SERC Discussion Paper 11008. (2011/05/24追加)

    企業や自治体がピーク電力需要を小さくするために輪番操業パターンを計画するのは、 事業所の数が多かったり、事業所毎に使用電力量が異なったりする場合、難しい問題となります。この輪番操業パターンを策定するための方法を考え、そのピーク削減効果の試算も行っています。

  • 大藤 建太,木村 宰(2011)新潟県 節電社会実験 第1回トライアルに伴う公共部門と民間需要家の取組み〜報道・公表資料から〜,SERC Discussion Paper 11007. (2011/05/24追加)

    東京電力管内の分析はさまざまな角度から行われていますが,この資料は,東北電力管内での節電取組みに関する事例紹介です。東北地方では,太平洋側の宮城・岩手・福島県で大きな被害がありましたが,被害が比較的軽かった新潟県で,県下いっせいにピーク時間帯の節電を行う「ピークカット15%大作戦」が行われました。夏場に備えて4月13日に行われた第1回の実験では,県などの自治体組織や大口需要家を中心に多大な節電協力が寄せられ,人口230万人の県全体で,前日比20万kWを削減できたそうです。

  • 杉山大志、杉山昌広、小松秀徳(2011)打ち水による電力不足緩和について,SERC Discussion Paper 11005. (2011/05/18追加)

    古くから日本では、夏に庭先に水をまいて涼を得る「打ち水」という習慣 があります。この打ち水の、都会のヒートアイランドの緩和効果を調べた複数の先行研究をふまえて、この夏の電力需要のピークカットにどの程度期待できそうなのか、どのような実施方法、体制がありうるのか、などの実際的な検討と政策提言がされています。

  • 化学工学会(2011/4/13)震災に伴う東日本エネルギー危機に関する緊急提言. (2011/05/16追加)

    震災後、電気やエネルギー系の学会に先駆けて、化学工学会からいち早く出された提言の改定版です。大きなメッセージに変更ありませんが、その後の需給動向の変化や東北地方での需給ひっ迫などに対応した修正が行われています。この提言の大きな特徴である、「電力需要の時間的空間的シフト」によるピーク電力需要削減効果については、前回の765万kWから、595-715万kWに下方修正されました。なお、ピークカットの対策のひとつに在宅勤務も推奨されていますが、これにはかえって需要増になる可能性も指摘されていますので、これもまた我々としても要検討項目です。

  • 住環境計画研究所(2011/4/25) 震災後の家庭の節電効果と省エネ行動について. (2011/04/30追加)

    住環境計画研究所による、震災後の東京電力供給エリアにある家庭の節電効果と省エネ行動について、インターネットを使ったアンケート調査の結果がまとめられています。前年比15%以上の節電に成功した世帯は、3割だったということですが、震災後、暖房の仕方を変更した世帯が8割にものぼるというのは勇気づけられます。今後、震災後の節電行動に関するこうしたアンケート調査データが蓄積されていくことで、貴重な知見が得られることを期待しています。

  • 西尾 健一郎(2011) 緊急節電対策としての一時的な照明間引き,SERC Discussion Paper 11003. (2011/04/18追加)

    蛍光灯などを抜きとってしまうことが,間引きです.その効果を定量的に評価し,どう進めればいいか具体的な政策に結びつけて提案しています. JISの照度基準が労働安全衛生法の安全基準を上回っていること,実際の照度がJIS基準を上回っているオフィスが多く存在することなど,照度そのものを管理する余地がまだまだあることなど,大変勉強になります.安定器の種類によって期待するほど効果が得られない場合もあるなど,あまり知られていないことも多いのではないでしょうか.この辺情報整理が必要ですね.照明を減らせば空調も減らせます.店舗や飲食店の見栄えのための白熱電球やハロゲン電球もこの夏は見直してもらいたいものです.

  • 今中 健雄(2011) 時刻、休日、連休シフトによる夏季ピーク負荷削減効果,SERC Discussion Paper 11002. (2011/04/17追加)

    夏季のピーク緩和策として,どのような電力需要のシフトが効果的かを検討した論文です.平日と休日の需要曲線に基づいて分析しており,大変わかりやすいです. 休日取得の分散は,8月のピーク需要を最大500万kW削減する効果があり,休日の分散に加えて,夏季に集中的に休暇を取得して休日そのものを増やす「連休シフト」を実施すれば,その効果は7,8月で最大500〜800万kWになるそうです.夏に休んで関西など電力不足の懸念のない地域に旅行に行く策には,私も賛成です.分析では,こうした休日取得の拡大・分散に比べると,操業時間を前倒す「時刻シフト」,いわゆるサマータイム制導入のピーク緩和に対する効果は小さいことも示されています.「夏期ピーク需要の内訳」のコーナーでも述べましたが,夏の需要ピークは午後の数時間というより,午前から夕方まで比較的フラットに大きいのです.数時間の勤務時間のシフトでは,このフラットな山を全体的に押し下げることはできません.

  • 日本エネルギー経済研究所(2011/4/11)【大地震関連エネルギー情報】【改訂版】夏期における家庭の節電対策と消費電力抑制効果について. (2011/04/17追加)

    夏期の需要対策が急務である昼間から夕方にかけては,一般家庭の在宅率が低く,対策が難しい時間帯でもあります.そうした中でも,家電機器や照明などを「こまめに消す」「設定温度を下げる」「使用時以外はコンセントを抜く」などの細かな節電対策が,東電管内全体では250〜310万kWの節電につながると試算されています.試算の内訳が公開されていないのですが,夏期最大のエアコン出力を800W程度と見積もっているようです。岩船研試算では600Wなのでもうちょっと小さめです.

  • 東京大学荻本和彦・岩船由美子(2011/4/8) [PDF]エネルギー需給の今後を考える−震災からの回復, 供給セキュリティの観点を含めて−. (2011/04/17追加)

    震災後の電力需給の状況,夏期までの需給両面の対策,より長期的な対策について,岩船も研究でご一緒させていただいている荻本先生が主体となって提言されています.

  • 電力需給緊急対策本部(2011/4/8) 夏期の電力需給対策の骨格(案). (2011/04/17追加)

    政府が4月8日付けでまとめた夏期需給対策の骨格(案).これによれば,東電管内,東北電力管内で,それぞれ1,000〜1,500万kW,150〜330万kW程度の需給ギャップ(最大値は昨年並みの猛暑を想定)とのことです.やむを得ない場合を除き,原則として計画停電を実施しないことを前提に,需要面・供給面それぞれの対策の基本方針を示しています.需要面では,大口需要家,小口需要家,家庭の部門ごとにそれぞれ25%,20%,15〜20%の抑制目標を掲げています.法律で使用を直接制限できる大口需要家以外は,自主的な取組を促す啓発活動が中心となっています.

  • 木村 宰(2011) 諸外国における緊急節電の経験 〜IEA報告 “Saving Electricity in a Hurry”の紹介〜,SERC Discussion Paper 11001. (2011/04/17追加)

    国際エネルギー機関(IEA)による緊急節電レポートを紹介したもの。緊急節電の基本的な考え方、進め方、海外事例などを、コンパクトにわかりやすく紹介 しています。カリフォルニアの電力危機で採られた節電対策は大変参考になります。 事後評価が重要といった提言など全ページが参考になる優れた報告ですが、私が特に心ひかれた点は、9ページの「節電キャンペーンで発するメッセージには ユーモアを取り入れることが効果的である.」という点でしょうか。不謹慎といわれかねないかもしれませんが、家庭部門まで巻き込むには、もっと大胆な啓発が必要かもしれません。

  • [PDF]三菱総合研究所(2011) 夏の電力危機を乗り切るために〜求められる総合的な節電メニューの検討と経済活動を活発化させる節電方策〜. (2011/04/07追加)

    日本経済の本格復興のために,夏場の電力消費を抑えるための対策が家庭,産業,業務,公共交通機関などの分野別に示されています.このレポートは3月31日にリリースされましたが,3月で計画停電が実施されなかった26日(日)と29日(火)には昨年より500万kW以上需要が少ないことから,震災による需要低下以外に,家庭やオフィス,駅などでの節電努力で数百万kWの需要抑制につながったと推定しています.適切な節電を行えば,夏のピーク需要抑制にもかなりの効果が期待できるわけです.経済復興の観点からも節電方策が経済の活性化につながることが重要,というメッセージはまさにその通りだと思います.

  • 公益社団法人 化学工学会(2011) 大震災による東日本の電力不足に関する緊急提言.

    電気学会よりエネルギー系の学会より一早く、化学工学会からこのような提言がリリースされました。夏期にむけては、電力需要の時間的空間的シフトが重要で、合わせて765万kWのピーク電力需要削減という期待がされています。休日を業界ごとにずらす、工場の夜間操業、夜勤、シェスタや在宅勤務が推奨され、かつ、関東からサーバや人を出す方法が提案されています。私も夏に東北旅行させるのはいい作戦だと思います。時間的シフトの見積もりがちょいと大きい気がしますが、これもまた我々としても要検討項目です。